三田にアトリエを構え居住するようになって、はや16年が経った。振り返ってみれば、この歳月は、今までの私の人生の中で最も創作活動の充実した期間だったと思う。私は、この三田の豊かな自然からエネルギーを頂き、多くの発想を得て、作品を創造し、世界中に送り出してきた。藍本にある私のアトリエまで訪ねて来る人たちは、緑に囲まれた環境や田園風景から、風や水で動く作品たちが生まれてきたことを、自ずと納得して下さるようだ。特に海外からわざわざやって来る人たちは、東京や大阪といった大都市では得られなかった、想像していた日本のイメージに、やっとここで出会えたと喜ばれる。
私が来てからも三田は大きく変貌した。人口は急増し、立派な道路や施設や、大きなビルやマンションがどんどん作られ、いわゆる都市化が進んで、確かに日常生活は以前より便利になった。
バブルで加速したこうした状況が、今は少し落ち着いてきたように思える。こんな時こそ、じっくりと長期の三田の未来像を描く、絶好のチャンスではないだろうか。現存する三田の貴重な自然を財産として生かした、ユニークな街作りを考えるべき時が来ていると思う。
新宮 晋